
旭化成(株) 川崎支社
新規顧客の獲得や取引コストの削減を実現すべく、B to B ECサイトの構築を手がける企業が増加している。旭化成株式会社 化成品・樹脂カンパニーでは、2001年6月に「AKchem.com」をINTERSTAGEで構築した。このサイトでは汎用樹脂や合成ゴムの技術情報などを参照できると同時に、Webでの発注を行うことも可能。スピーディーで効率的なeビジネス環境を実現している。
[ 2002年1月掲載 ]

三宅 行人氏
旭化成株式会社 化成品・樹脂カンパニー 化成品樹脂Eビジネス推進部長
旭化成(株) 化成品・樹脂カンパニーは、スチレンモノマー、アクリロニトリルなどの化成品、ポリエチレン、ABSなどの汎用樹脂、合成ゴムといった製品群を取り扱う事業部門である。
これらの製品は自動車の内外装やタイヤ、食器、食品包装資材など、日常生活に密着したあらゆる場面で利用されている。旭化成(株) 化成品・樹脂カンパニー 化成品樹脂Eビジネス推進部長 三宅 行人氏は「当カンパニーは汎用性の高い製品がメインとなるだけに、より良い品物をいかに安くお届けできるかが重要なポイントとなります」と語る。
特別な付加価値を持った製品であれば市場での優位性を保つことも容易だが、品質面の差別化がしにくい汎用品の場合はそうもいかない。市場での競争を勝ち抜き、収益を向上させていくためには、ビジネスそのものの効率を高めることが不可欠だ。「製品開発や品質向上に力を注ぐのはもちろんですが、販売活動の生産性をさらに向上させることも重要と考え、1998年からカンパニー全体でコストダウンや業務改善に取り組んできました」と三宅氏は説明する。
業務改善を行う中で、これまでの営業のやり方についても見直した。三宅氏は、その経緯について「対面ビジネスは、もちろん大事です。しかし、お客様が技術資料などをすぐ必要としているのに、営業担当者が伺うまで入手できないのでは問題です。お客様にご迷惑をかけるだけでなく、販売機会の損失にもつながります」と説明する。
そこで、化成品・樹脂カンパニーでは、こうした問題を解消すべくeビジネスサイトの構築に乗り出した。「サイト構築の目標ですが、まず第一にお客様に役立つ情報をインターネットで提供したいと考えました」と三宅氏は語る。
化成品・樹脂カンパニーが取り扱う製品は、何らかの最終製品を作るための中間製品である。
取引先の企業では、その中間製品が自社製品に最適な性質を備えているかどうかを知る必要がある。しかも、カタログに載っている一般的な仕様だけでなく、耐薬品性はどうか、熱可塑性はどうかといった深いレベルの技術情報が求められる。これに加えて、製品に含まれる化学物質や、その有害性、環境への影響を記したMSDS(注1)のような文書も不可欠である。
「こうした情報をいつでも入手していただけるようにしておけば、ビジネススピードを飛躍的に高めることができます。また、技術情報を見たお客様からの問い合わせに対応することで、さらなる品質向上や新製品の開発に役立てることも可能です」と三宅氏は力強く語る。

もう一つの目標は、取引形態の変革である。化成品・樹脂カンパニーではこれまでEDIの仕組みを個別に構築しており、大手の取引先との受発注に活用してきた。「商社と1対1で構築したEDI、石油化学協会標準に準拠したEDI、EIAJ(注2)標準に準拠したEDIなどを業務に利用してきました」と説明する三宅氏。しかしそれ以外の受注については基本的に電話やファクシミリを利用しており、依然として電子化されていないままであった。
取引全体に占める比率はそれほど高くないとはいえ、電話・ファクシミリでの業務は受注データの手入力などの作業を伴う。EDIに比べればスピードも遅くなるし、ミスが起きる危険もある。
とはいえ中小規模の取引先にとって、わざわざ個別にEDIシステムを構築するのは負担が重すぎる。取引を電子化するメリットは十分理解していても、そのためのコストを考えると電話やファクシミリに頼らざるを得ないのが現状だったのだ。
「しかしインターネットを使えば、こうした課題はすべてクリアできます。お客様側にはPCとWebブラウザがあれば済みますから、特別な仕組みを構築する必要もありません」と三宅氏は語る。

http://www.akchem.com
これらの要件を兼ね備えたサイトとして、2001年6月1日にオープンしたのが「AKchem.com」である。AKchem.comでは製品ジャンルごとの商品情報や技術情報を開示。関連するマーケットの情報なども提供されている。また顧客ニーズに合わせて情報の内容をカスタマイズする機能も備えているため、顧客企業は自社が必要とする技術情報などを適切に入手することが可能になっている。
これに加えて、懸案であったWeb-EDIシステムも実現し、サイトで商品情報を検索し、そのまま発注することができるようになった。三宅氏は「商取引の効率化を狙って構築したWeb-EDIですが、それだけでなく新規顧客を獲得するためのツールとしても機能させていきたい」と期待を語る。

島田 章氏
旭化成情報システム株式会社 技術企画室 企画グループ グループ長

山本 晋也氏
旭化成情報システム株式会社 ビジネス・ソリューション事業部 企画・営業部 企画グループ
AKchem.comのシステム構築を手がけた旭化成情報システム(株) ビジネス・ソリューション事業部 企画・営業部 企画グループ 山本 晋也氏は、構築時の要件について「既存のEDIシステムは、基幹ホストで稼働している販売物流システムとの連携によって、製品出荷の自動化なども行っています。AKchem.comのWeb-EDIについても、これと同じような仕組みが求められました」と説明する。
汎用樹脂などの製品はペレットにした状態で袋詰めにされ、日本各地のストックポイントに分散して保管されている。顧客から注文があった場合は、システムが自動的に最適なストックポイントを探し出し、そこから出荷されるようになっている。ストックポイントの数は全国で約300ヵ所にも達するが、こうした受注、出荷指図などの一連の処理をシステムで自動化することで、効率的な物流を実現しているのだ。
「せっかくWeb-EDIで受注までのフローを効率化しても、それがバックエンドの業務に結びつかないのでは意味がありません。今回のシステムでは、既存システムと新しいWebシステムとのシームレスな統合が課題でした」(山本氏)。
この要件を満たすために、旭化成情報システム(株)では、富士通のアプリケーション・サーバ「INTERSTAGEApplication Server」をシステムの中核に採用した。その理由を山本氏は「まず基幹系に富士通のGSシリーズが導入されているため、既存システムとの親和性が高い点を評価しました。また高度なレガシー連携機能を備えたINTERSTAGEApplicaiton Serverなら、ホスト側の手直しがほとんど必要ない点も大きなポイントとなりました」と説明する。
Web-EDIシステムの概要は次のようなものだ。まず顧客はWebブラウザを使用してAKchem.comの「オンライン取引」を選択し、発注処理を行う。AKchem.comでは、顧客に注文受領メールを返信すると同時に、基幹ホストの販売物流システムに受注データを転送。販売物流システムは在庫引当を行った後、納期回答をAKchem.comに返す。AKchem.comは顧客に納期回答メールを送信し、商社などの仲介業者が介在する場合はそこにも注文があったという情報を通知する。
旭化成情報システム(株) 技術企画室企画グループ グループ長 島田 章氏は「在庫データなどをホストからサーバにレプリケーションしてシステムを構築する方法もありますが、データをホストとサーバに分散すると不整合が起きる可能性もあります。受注や納期回答の正確性を確保する上でも、INTERSTAGEApplication Serverによるリアルタイム連携が有効でした」と語る。Web-EDIシステムはホストだけでなく社内の他のデータベースサーバなどとも連携が行われているが、こうした既存のサーバ群との連携もスムーズに行えたという。
またサイトを利用するユーザーの利便性を高めるような工夫も加えられている。顧客ごとに最適な情報を提供できるようなカスタマイズ機能が備わっていることは先にも述べた通りだが、Web-EDIで発注を行う際にもこうした機能を活用。顧客の発注履歴を画面に表示することで、頻繁に注文する製品をマウス操作で簡単に選択できるようにしている。島田氏は「電話やファクシミリの代わりにご利用いただくわけですから、これらより簡単に使えなくては意味がありません。そこでこのような入力の手間を省く機能を設けました」と説明する。

システムを構築するにあたっては、もう一つ大きなポイントがあった。構築期間の短縮である。島田氏は「サイトオープンは6月ですが、システム自体は2000年11月から開発に着手し、2001年3月に稼働をはじめました」と説明する。実質3ヵ月余りで、基幹システムとの連携機能やWeb-EDI機能を備えた高度なB toB ECサイトを立ち上げたわけである。
「こうした短期構築を実現する上でも、INTERSTAGE Application Serverを選択したメリットは大きかったですね」とにこやかに語る山本氏。島田氏も「できあがったシステムは比較的大きなものになりましたが、その割には障害で苦労することもありませんでした。またシステムのレスポンスも十分です。品質・パフォーマンスの両面で、満足がいくシステムに仕上がりました」と続ける。
専用線を使った既存のEDIシステムと異なり、インターネットベースのシステムではセキュリティの確保も重要な問題となる。特に最近ではクラッカーによる不正アクセスやウイルスが社会問題化しているだけに、万全の体制を敷いておくことが必要だ。山本氏はセキュリティポリシーに関わることなので詳細には語れないとしながらも、「INTERSTAGEのおかげで、強固なセキュリティを築くことができました」と強調する。
現在のところ、AKchem.comで化成品・樹脂カンパニーの取り扱い製品すべてを網羅できているわけではない。そこで今後はさらに取り扱い製品を拡大し、Web-EDIですべての受注が行えるようにしていく予定だ。
AKchem.comを構築した効果について、三宅氏は「お客様へのサービスレベル向上が実現できれば、当社との結びつきをより強めていただくことができます。そういう意味でも、詳細な技術情報をWebで提供できるようになったことの意義は大きいわけです。最近は当社と直接取引を行うお客様が増えていますが、Web-EDIはこうした不特定多数のお客様とのビジネスを効率的に行う上で大いに役立っています」と語る。今後の展開としては、XMLやRosettaNetなどデータ交換の標準化にも積極的に取り組んでいる。
化成品・樹脂カンパニーでは現在でもサイトの拡張を進めており、2001年10月には合成ゴムを対象としたサイト(http://www.akelastomer.com/)を立ち上げた。AKchem.comはどちらかといえば従来の顧客企業をターゲットにしたサイトだが、この新しいサイトは今まで気づかなかった潜在的な顧客や用途を掘り起こすことを目的としている。
「従来のシステムは、企業内の業務をいかに効率化するかが主眼でした。それが、今後はお客様へのサービスをどう充実させるかが重要になります。我々としてもAKchem.comをはじめとするシステム群を、お客様との強固なバリューチェーン構築に役立てたいですね」と三宅氏は抱負を語る。INTERSTAGEApplication Serverは、そのeビジネス戦略の中核を力強く支えていく。
| 設立 | 1931年5月 |
|---|---|
| 資本金 | 1,033億円 |
| 売上高 | 1兆2694億円(2001年3月度連結) |
| 業務概要 | ケミカル、住宅・建材、繊維などの分野で一般にも広く知られる旭化成。エレクトロニクス、医療・医薬、酒類などの分野にも幅広く事業を展開している。
2001年1月1日に、社名を旭化成工業株式会社から旭化成株式会社へ変更。 |
| ホームページ | 旭化成株式会社ホームページ AKchem.com 旭化成のケミカル&プラスチック情報サイト |
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