日本最大手のISPとして知られるニフティでは、新しい個人間決済サービス「@pay(アット・ペイ)」の提供を開始した。このサービスを利用すれば、@nifty会員が作成した様々なデジタルコンテンツをオンラインで購入することが可能。インターネット上での小額クレジット決済を実現した点で注目される。システム基盤には「InterstageApplication Server」を採用し、高度な信頼性と拡張性を備えたシステム環境を短期間で構築した。
[ 2002年7月掲載 ]

宮澤 徹氏
ニフティ株式会社 企画統括部長代理 (兼)企画部長 (兼)ナビゲーション部長
インターネットが普及するはるか以前から、日本のPCユーザーに本格的なネットワーク・サービスを提供してきたニフティ。電子メールやフリーウェア/シェアウェア、各種のオンライン情報サービスなど、今でこそ当たり前の存在となっているオンラインサービスのほとんどを、ニフティでは15年前から提供し続けてきた。
最近はISP間での価格競争も熾烈さを増しており、安さだけを売り物にするプロバイダーも登場している。だが、ニフティではサービス価格だけでなく、内容や品質の向上にも全力で取り組んでいる。企画統括部長代理 (兼)企画部長 (兼)ナビゲーション部長 宮澤 徹氏は「単なるインターネット接続サービスやコンテンツ配信だけでは不十分。@nifty会員の皆様の活動を、いかに支援していくかが我々の最大の課題です」と強調する。
もともとニフティは、会員同士のコミュニケーションや会員個人の情報発信をサポートすることに特に熱心な企業である。パソコン通信時代からの長い歴史を持つ「フォーラム」は、その後のオンライン・コミュニティーのあり方に多大な影響を与えたし、シェアウェアの送金代行サービスなども早い時期から展開している。
もちろんインターネット時代になっても、こうした同社の姿勢は変わらない。優秀な@nifty会員ホームページを表彰する「@homepageグランプリ」や映像作品発表の場である「OpenArt」など、様々なイベントを実施。宮澤氏は「弊社では2001年11月に『プロバイダーからパートナーへ』という宣言を行いました。今後は『With Us,You Can.』をテーマに、サービスのさらなる拡充に努めていきます」と語る。

@payのトップ画面
そのニフティが新たなサービスとして打ち出したのが、インターネットを使った個人間決済サービス「@pay」である。
@payが登場した背景を、宮澤氏は「@nifty会員の中には、イラストや写真、サウンド、素材集など、様々なデジタルコンテンツを自分で作成している方も数多くいらっしゃいます。ですが、従来はこうしたデジタルコンテンツを自分でオンライン販売したいと思っても、適当な決済手段がなかったのです」と説明する。
企業がECサイトを構築する場合と異なり、個人の立場でクレジット会社などとの契約交渉を行うことは困難だ。銀行振り込みを利用する手もあるが、これもコンテンツの価格が小額だと振り込み料の方が高くなってしまう。デジタルコンテンツを提供したいユーザーとそれを利用したいユーザーがいるにもかかわらず、今まではこの両者をつなぐ決済手段がなかったのである。
こうした問題を解消してくれるのが、@payである。決済にはクレジットカードを利用するが、クレジット会社との決済環境はニフティ側で用意されるため、ユーザーが個別にクレジット会社と交渉したり、決済システムを構築したりする必要はない。しかも、コンテンツの最低価格は100円。これまでは困難だった安価なデジタルコンテンツのインターネット販売が、@payによって可能になるのだ。
個人によるオンライン販売という点から、インターネット・オークションを思い浮かべる人もいるかもしれない。しかし、この両者には大きな違いがある。まずインターネット・オークションが売り手と買い手が出会う「場」を提供するものであるのに対し、@payは個人間での決済機能を提供する。また、インターネット・オークションは一ヵ所で提供される集中型のサービスだが、@payは会員ホームページで提供される分散型のサービスだ。
販売される商品も、インターネット・オークションは中古品などの物品が中心だが、@payはデジタルコンテンツが中心。一見似ているように見えるが、そのサービス内容にはかなり開きがある。
「オンライン登録だけですぐに、コンテンツを販売できるようになりますから、利用はとても簡単です。販売者登録には@niftyのIDが必要ですが、決済サーバへのリンクによってサービスが利用できますので、@nifty以外で開設しているホームページからも販売ができます」と説明する宮澤氏。登録料は月々わずか200円。販売手数料も15%とリーズナブルである。
商品データを安全に保管したいと考えるユーザーのために、月額200円の「ライブラリオプション」も用意されている。ライブラリオプションでは、商品データの専用サーバにコンテンツを保存し、@niftyがウイルスチェックを行うとともにセキュリティの問題も回避できる。また、既存購入者による販売者評価が見られるなど、コンテンツを購入するユーザー向けの機能も充実している。
クレジット決済ではセキュリティも大きな問題だが、@payでは@niftyIDを使って決済を行うため、販売者に決済情報が流れることはない。このため購入者は安心してサービスを利用することができる。
また@nifty以外のISPと契約しているユーザーも、「Combo会員」と呼ばれるコンテンツ会員となることで@payを利用した購入が可能。Combo会員には月々の固定料金などもかからないため、費用負担を強いられる心配もない。
2002年3月のサービス開始以来、既に多くのユーザーが@payを使ったコンテンツ販売を開始している。宮澤氏は「@payによって会員の方々のクリエイティブ活動が活性化すれば、当社としてもこんなうれしいことはありません。皆様の元気の素となるようなサービスに育てていきたいですね」と力強く語る。

鈴木 隆一氏
ニフティ株式会社 システム事業部長代理 (兼)アプリケーション 開発部長
@payの開発に際しては、Java、EJBをはじめとする最先端の分散コンポーネント技術でシステムを構築する方法が採用された。システム事業部長代理 (兼)アプリケーション開発部長 鈴木隆一氏は、その理由を「我々情報システム部門には、開発業務の効率化と標準化の推進、それに完成したシステムの品質を向上させる役割が常に課せられています。@payの仕組みを実現する上でも、どういう開発方法が最適かをいろいろと模索しました。特に今回は短期間で安定したシステムを構築しなければなりませんでしたので、JavaをベースとしたWebアプリケーションサーバが最適だろうという結論に達したのです」と説明する。
Webアプリケーションサーバを使った三階層システムなら、今後サービスが拡大した際にも柔軟にスケールアップしていくことができる。開発生産性の面でも、システムのスケーラビリティの面でも、Webアプリケーションサーバを採用するのが有利と判断したわけである。
同社の開発業務はパソコン通信サービス「NIFTY-Serve」の時代から連綿と続いているが、従来は個別開発が基本だった。Webアプリケーションサーバを使った開発は、今回が初めてとなる。
「当初は不安もあったが、あえてチャレンジに踏み切りました」と鈴木氏は語る。「高品質なシステムを短期で実現するためには、個別開発ではやはり限界がある。今後のシステム開発の流れを転換するためにも、コンポーネントによる開発を選択すべきだと考えました」(鈴木氏)。
だが、これは決して容易な決断ではなかった。@payは「プロバイダーからパートナーへ」とのコンセプトを打ち出してから第一弾のサービスとなるため、サービス開始の遅れは絶対に許されなかった。しかも、構築に着手したのは2001年10月。この限られた期間内で、システムを実現しなければならなかったのだ。
「プロバイダーからパートナーへ」を宣言した@nifty

この難題をクリアするために選ばれたのが、富士通のWebアプリケーションサーバ「Interstage Application Server」だ。鈴木氏は「市場には様々なWebアプリケーションサーバ製品がありますが、Interstage Application Serverは、我々が@payシステムの検討をはじめた2001年夏頃から既にSOAPやUDDIなど、最新の業界標準を実装していました。今後は間違いなくWebサービスが普及していくでしょうから、我々としてもこうした機能をきちんと取り込んでいるWebアプリケーションサーバを選択したかったのです」と説明する。
もう一つ大きなポイントとなったのが、富士通の強力なサポート体制である。24時間・365日稼働が前提のインターネット・サービスでは、万一障害が発生した際にも迅速に復旧作業ができなくてはならない。「サポート対応の充実度を考えれば、やはり海外製品には多少の不安が残ります。その点、国内で万全のサポート体制が確保されている富士通製品なら、安心してシステムを構築・運用することができます」と鈴木氏は語る。
Interstage Application Serverを採用したことで、システムの開発生産性は飛躍的に向上。鈴木氏は「一番の要因は、『MVCモデル』に基づく開発が実現できたことです」と説明する。
MVCモデルでは、システムをModel(ビジネスロジック)・View(プレゼンテーション)・Control (通信/制御)の3つの分野に分けて開発を行う。このためシステムの変更や拡張にも柔軟に対応できる。
「ビジネスロジックの開発には仮画面を使用し、最後の1週間で実際のサービスに用いる画面との入れ替えを実施しました。もちろん、ビジネスロジック部分の手直しはまったくゼロで、システムが稼働しています」と鈴木氏は満足げに語る。
従来はビジネスロジックとプレゼンテーションのどちらかに変更を加えると、もう一方にも直接的な影響が及んでいた。しかし今回はこうした修正作業にまつわる苦労は皆無。鈴木氏は「今後のサービ「プロバイダーからパートナーへ」を宣言した@niftyPRスの広がりにも、余裕を持って対応できます」と続ける。
当初気にかけていたJava、EJBの性能も、十分なパフォーマンスを発揮した。「現在はWebアプリケーションサーバ/DBサーバを1台のサーバで兼用していますが、アクセス数が増えた時にもサーバを分けることで容易に対応できます。性能やスケーラビリティの面でも、Interstage Application Serverに対する不満はないですね」(鈴木氏)。
今回の開発では、富士通のJava統合開発環境「Interstage Apworks」が使用された。「従来はエディタなどを使って一から開発業務を行っていたわけですが、Interstage Apworksならば様々な手順や標準的なメッセージ交換などを、自動的に挿入していくことができます。我々はビジネスロジックの開発に専念できますので、開発効率がぐんと高まりました」と鈴木氏は語る。
従来はすべて手作りしていたインターフェース部分などもInterstage Apworksが自動生成してくれるため、デバッグやテスト作業の大幅な軽減にも成功した。鈴木氏は「今後の開発で部品が蓄積されてくれば、さらに開発生産性が向上することでしょう」と期待を語る。
同社では開発業務における国際的なアライアンスも推進しており、今回もインドのIT企業であるゼンサーテクノロジー社に一部開発を委託している。鈴木氏はこの点について、「当社の本番環境はSolarisですが、ゼンサーテクノロジー社ではWindows NT上のInterstage環境で開発を行いました」とエピソードを披露する。
標準技術で開発を行えば、理論上はUNIX・Windowsのクロスプラットフォーム開発も可能なはずである。とはいえ、現実にこうした形で開発を行うケースは稀だ。しかし、インドで開発したソースコードを日本でコンパイルしたところ、まったく問題なく動作したという。「Interstage Application Serverのポータビリティの高さには本当に感心しました」と鈴木氏はにこやかに語る。

インターネットにおける個人間決済サービスの先駆けとなった@payだが、今後も様々な分野にサービスを拡張していく予定だ。宮澤氏は「現在@payとの連携サービスとしてストリーミングサービス『@streaming』を予定しています。これを利用すれば、個人やグループで撮影した映像作品を、インターネットで公開・販売することができます」と説明する。
「今後の新しいサービスは、InterstageApplication Serverの利用をまず念頭において開発を進めます。コンポーネント開発による高品質・高生産性を実現しながら、我々開発者自身の変革もどんどん進めていきたいですね」と鈴木氏は抱負を語る。次世代のインターネット・サービスが、今後も次々と@niftyから生まれてくることだろう。
| 設立 | 1986年 |
|---|---|
| 資本金 | 10億円 |
| 年商 | 639億円(2001年度) |
| 従業員数 | 495名(2002年4月20日現在) |
| 会員数 | 518万人(@nifty)(2002年3月末現在) |
| 業務概要 | 日本を代表するインターネットサービスプロバイダー。1987年にパソコン通信サービス「NIFTY-Serve」をオープンした。電子メールやフォーラムをはじめとする様々なオンラインサービスを提供し、インターネット環境の普及にも大きく貢献。1991年に社名を現在の「ニフティ株式会社」に変更した。 |
| ホームページ | @nifty |
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